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2015/07/01(水)
「なっ……」
何か言い返そうとして、でもすぐ声を出してしまったことを後悔した。
激しい羞恥に、顔がカーっと熱くなった。
「マリクリと話したいんだけど?」
「はあっ?」
「……マリクリぃ、起きてますかぁ?」
突然、甘い声でケンジが囁く。
電話をかける前までの興奮が微かに思い出された。
でも……。
「ば、馬鹿、ちょっとっ……」
声が上ずっているのがわかった。
顔が熱い。
全身が火照っている。
興奮は消えたわけではないみたいだった。
身体の奧の見えない場所に、押し込まれていただけだったらしい。
「聞こえてないのかなあ?」
「だからぁっ、私はマリクリじゃないっ」
「じゃあ、起こせよ」
「……え?」
「マリクリ~、起きろ~」
馬鹿が電話越しに呼びかけてくる。
ムードとか、さりげなさとか一切なかった。
はっきりいって、大馬鹿プレイだ。
なのに私は、ドキドキしちゃっている。
頭が熱くて、ぼうっとなる。
――起きろだなんて、……どうしろっていうのさ。
どう答えていいかわからず、ちょっとふざけて返した。
「返事がない。ただの屍のようだ」
「マリクリぃ~」
「……だからあっ」
「寝てるのか?」
「……知らない」
「触ってみ?」
って、今、何言われた?
わけわかんないし。
ドキドキが激しくなる。
ヤバい。――絶対無理。
そんなエッチな提案に従うわけ……、え? あったか、自分!!
何か左手がそろそろと下半身へ伸びていってる。
――嘘だろー、マジっすか。
右手は携帯を耳に押しつけてる。
微かに、ケンジの息の音が聞こえた気がした。
そのことが後押しとなって、指が下着の縁をくぐった。
すぐにそこに届いた。
「あっ、あのっ、……触った」
――ああ、私、何してんだろ?
絶対にどうかしてる。
っていうか、完全におかしくなってる。
大丈夫か、私? いや、駄目です、馬鹿です、大馬鹿ですとも。
私の口から熱い息が勝手に漏れる。
――ああ、携帯の電波は、こんな気配まで伝えてしまうですか。
電話の向こうからも、微かだが興奮が伝わってくる。
ケンジの声が、いつもと違っていた。
「マリクリ……」
「あ、……うん」
うっひゃあ~! とうとう返事までしちまった。
って、やっぱ私、絶対にどうかなってるわ。
多分、この前の土曜日に、何かが変わったんだと思う。
性欲魔神のまき散らすウイルスに感染したのかも。
「どうだ? マリクリ起きてる?」
や、やだ……。
初めてわかった。
気がつくの遅すぎだと思うけど、クリ・フェチ野郎のいわんとしてること。
そこはさっきたっぷり触ったせいで、敏感になっている。
おまけに、たっぷりと溢れたもので、下着まで濡れている。
私の指は、クリの状態を確かめるように、下の方へ潜り込んでいく。
――ああ、自分が自分じゃないみたい。
指が勝手に動き、そして鋭い快感が走った。
「あっ」
「ふふ、感じた?」
「ば、馬鹿っ」
「マリクリは起きてるか?」
「……わかんない」
「じゃあ、ちょっとさすって、起こしてみ?」
ああ馬鹿、ケンジ、ヤらしすぎ……。
ヤらしくて、興奮する。
どうしよう……。
恥ずかしいのに、でも、したくなってる。
「あ、んんっ」
クリを下から撫でていた。
ソフトに、でも、しっかり触れている。
気持ちいい……。
「マリクリ……」
「んんっ」
「起きたら、教えろよ」
「あ、あ、やっ……」
なんか、ケンジにされてるみたいな感じだった。
ケンジが何かいう度に、私の指が動く。
ヤツの指示通りに動いてる。
快感が走り抜け、またどくどくと溢れてくる。
クリがずきずきと疼いていた。
撫で上げると、その度に身体の奧が痺れたみたいになる。
すぐに固く凝っていくのがわかった。
襞の内側が熱い。
縦に辿ると、溢れた愛液が指にまとわりつく。
左右の襞が合わさるところに、コリっとした小さな感触がある。
指が届く度に、そこは少しずつ体積を増していく。
「マリクリ~」
「……あ、あっ」
「どうだ? 起きた?」
「あの、……ぅ、うん」
「起きたんなら、ちゃんと『起きた』っていわないと……」
「起きた、あの、……ちょっと」
「そっか。おはよー」
「ば、馬鹿ッ」
朝じゃない。深夜だって。
それに、挨拶すなっ。
だけど、ツッコミを言葉にする余裕が私にはない。
心臓バクバクいってて、あそこはずきずきしてて。
「マジ可愛いんだよな、起き上がったマリクリ。普段は隠れてるくせに、顔出してさ」
「や、やだっ」
「マリとは逆だな」
「えっ?」
「オマエって、いつも態度でかいくせに、エッチの時は何ていうか、割とおとなしめじゃん?」
「……う、るさいっ」
「だけどマリクリは、普段は小さいけど感じると大きくなっ……」
「ばっ、もう言うなっ!」
ケンジのセリフが終わらないうちに、私は悲鳴に近い声でそれを制した。
顔から火が出そうだった。
だけど指は離れようとしない。
それどころか、そこの形を確かめるみたいに、勝手に滑っていく。
まだそっとだ。ソフトにしか触れていない。
それでも鋭い快感が走り抜ける。
その快感以上に、これまで自分で触った時とは比べ物にならないほどの興奮がわき上がっていく。
頭がくらくらするほど興奮して、それに追いつこうとするように快感も大きくなっていく気がする。
「挟めるようになったか?」
「あっ、んんんっ」
「挟んでみ?」
「いやあっっ」
イやらしくて、恥ずかしくて、それが苦しい。
なのに、私の指はヤツの要請に嬉々として応えていく。
ケンジが何か言う度に、結局そのようにしてしまう。
――ああ、おかしくなる。
興奮がまたひとまわり深くなる。
……もう、止めることなんてできない。
止めたいとも思っていなかった。